東京フィルハーモニー交響楽団、7月定期演奏会を聴いた。2007年の第13回チャイコフスキー国際コンクールで優勝を飾ったヴァイオリニスト・神尾真由子が登場。

撮影=上野隆文/提供=東京フィルハーモニー交響楽団
神尾は、2017年より宗次コレクションより貸与されている1731年製ストラディヴァリウス「ルビノフ」を愛用。ヴァイオリン協奏曲の中でも屈指の人気と難易度を誇るチャイコフスキー・ヴァイオリン協奏曲に挑んだ。神尾は、一音目から聴衆を惹きつける説得力を持ち、繊細さと力強さが共存した演奏を披露。

撮影=上野隆文/提供=東京フィルハーモニー交響楽団
楽器から紡がれる音色は、柔らかくも芯のあるトーンで、チャイコフスキーの旋律美を際立たせていた。特に第1楽章のカデンツァでは、技巧と詩情が一体となり、ロシアの白夜を思わせる幻想的な世界感が広がった。
第三楽章:情熱と躍動のフィナーレでは、テンポの速さにも関わらず、音の粒立ちが明確。スピッカートのキレと、ロマンティックな歌いまわしが際立っていた。

撮影=上野隆文/提供=東京フィルハーモニー交響楽団
テクニカルな難所を次々と乗り越える神尾の姿に、聴衆は息を呑み、チョン・ミン指揮 東京フィルは、神尾の情熱と緊密に連携し、全体を立体的に響かせた。
悲しみと希望が交錯する“チャイコフスキー最後の交響曲”が後半、披露された。

撮影=上野隆文/提供=東京フィルハーモニー交響楽団
第1楽章では、感情が一気に噴き出すような場面と、内にこもるような陰影あるコントラストが鮮やかで、チャイコフスキーの複雑な内面が生々しく描写された。東京フィルの弦セクションは絶妙なニュアンスに富み、ヴィオラとチェロの厚みある響きが印象的だった。激しい情熱表現と急激なテンポ感、音量変化にもしっかりと対応していた。

撮影=上野隆文/提供=東京フィルハーモニー交響楽団
チョン・ミンの音楽的解釈は曲の冒頭、平坦な部分があったが、指揮姿はコンパクトながらも次第に緻密なリズムとエネルギー感に富み、クライマックスに向かって一気駆け上がった。

撮影=上野隆文/提供=東京フィルハーモニー交響楽団
第三楽章行進風スケルツォでは、木管と弦、そしてブラスが交錯するリズミカルかつ躍動的な対話が展開し、オーケストラのテクニックが卓越していた。

撮影=上野隆文/提供=東京フィルハーモニー交響楽団
第4楽章は、交響曲の終楽章としては異例の「アダージョ」で締めくくられる。静けさと虚無感がホール全体を支配し、単なる音程やリズム以上に「死・絶望・哀しみ」といった深い感情が表出された。消え入るような終結と悲劇的なアンダンテが印象的だった。

撮影=上野隆文/提供=東京フィルハーモニー交響楽団
演奏後、10秒以上に渡る長い沈黙と、やがて訪れた熱烈なブラブォーが、演奏と作品に対する感動を物語っていた。

撮影=上野隆文/提供=東京フィルハーモニー交響楽団
■東京フィルハーモニー交響楽団7月定期演奏会
公演日時・会場:
7月17日(木)19:00 サントリーホール
7月18日(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
7月20日(日)15:00 Bunkamuraオーチャードホール
出演:
指揮:チョン・ミン(アソシエイト・コンダクター)
ヴァイオリン:神尾真由子
プログラム:
チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲
チャイコフスキー/交響曲第6番『悲愴』


