【実食レポ】日本料理『雲海』開業40周年記念特別会席《ANAインターコンチネンタルホテル東京》

東京・赤坂のランドマークとして長年愛され続けてきたANAインターコンチネンタルホテル東京が、2026年6月7日に開業40周年を迎えた。

現在では世界各国から旅行者が訪れるインターナショナルホテルとして知られる同ホテルだが、その歴史は1986年に遡る。当時、森ビルによる大規模再開発プロジェクト「アークヒルズ」の開業とともに、「東京全日空ホテル」として誕生した。

「アークヒルズ」は、オフィスや住宅、文化施設を融合させた日本初の本格的な職住近接型都市開発として注目を集めたプロジェクト。その中核施設として開業した同ホテルは、『新しき、ホテル・ソサエティ。』をコンセプトに掲げ、国内外の人々が集い交流する新たな社交空間を目指した。

当時としては革新的だった吹き抜けのアトリウムロビーは、ホテルの象徴的存在として多くの人々を魅了。ビジネス、文化、芸術、国際交流の舞台として、東京の発展とともに歩みを重ねてきた。

2007年には世界最大級のホテルグループであるIHG(インターコンチネンタル ホテルズ グループ)との提携により、「ANAインターコンチネンタルホテル東京」へリブランド。日本ならではのきめ細やかなホスピタリティとグローバルブランドの品質を融合したラグジュアリーホテルとして新たなステージへ進化した。

現在は801室の客室を有し、年間を通じて宿泊ゲストの約80%以上を海外からの旅行者が占める。館内スタッフも多国籍化が進み、東京と世界をつなぐ国際交流の拠点として存在感を放っている。

開業40周年記念企画がスタート
~歴史と革新を味わう特別な美食体験

40周年を迎える今年、ホテルではさまざまな記念企画を展開している。その第一弾として、2026年6月1日から9月30日までの期間限定で、開業当初から営業を続ける3つのレストラン、日本料理「雲海」、中国料理「花梨」、鉄板焼「赤坂」にて特別記念メニューを提供。

昭和から平成、令和へと受け継がれてきたホテルの歴史を料理で表現し、往年の人気メニューを現代の技術と感性で再構築したコースを楽しめる内容となっている。

さらに料理に合わせて1986年ヴィンテージワインも用意されており、ホテルの40年の歩みに思いを馳せながら味わうことができる。


鉄板焼「赤坂」で提供されている1986年 ヴィンテージワイン。コラヴァン(Coravin)によるワイン保存システムを採用

長年愛され続けてきた伝統と、新たな時代へ向けた挑戦。その両方を体感できるのが今回の記念企画の大きな魅力だ。

日本料理「雲海」
~都会の中心で出会う、本格和食と日本美

ホテル館内に13のレストラン&バーを擁するANAインターコンチネンタルホテル東京。その中でも日本料理「雲海」は、開業以来40年にわたり日本料理の伝統を守り続けてきた名店である。店名の由来でもある「雲海」を思わせる静謐な空間には、都心にいることを忘れさせる落ち着きが漂う。

店内は重厚感のある和モダンな設えで統一され、日本らしい美意識を感じさせる上質な空間。国内外から訪れるゲストを迎え続けてきた歴史が、その随所に息づいている。

料理は伝統的な会席料理を中心に構成され、四季折々の旬の食材を取り入れながら毎月献立を変更。季節の移ろいを味覚で楽しめることから、リピーターも多いという。器、盛り付け、出汁、火入れに至るまで繊細なこだわりが貫かれ、日本料理の奥深さを五感で体験できる。

日本庭園が織りなす静謐な空間
~四季の移ろいを映す、都心の和景観

日本料理「雲海」の魅力のひとつが、店内から望むことのできる日本庭園。3階フロアに位置しながら、窓の向こうには約360平方メートルの広さを誇る庭園が広がり、都心にいることを忘れさせるような落ち着いた景観を演出している。

この庭園は、旧芝離宮恩賜庭園をモチーフに設計された都内有数の人工地盤庭園。「四季八方見」の考え方を取り入れ、どの場所から眺めても季節の趣が感じられるよう設えられている。

庭園の中央には広々とした池が配され、その奥には穏やかに流れ落ちる滝の姿も。耳を澄ませば水音が心地よく響き、和やかな時間の流れを感じさせてくれる。

春の新緑、夏の深まる緑、秋の色づき、冬の静けさと、一年を通じて異なる表情を見せる庭園は、季節を大切にする日本料理との相性も見事。夜にはライトアップが施され、昼間とは異なる落ち着いた趣を楽しむことができる。自然の風景を眺めながら食事を味わうひとときは、都心のホテルならではの上質な非日常体験といえるだろう。

店内のテーブル席や個室の多くが庭園に面しており、会食や接待、ご家族の祝いの席など、さまざまなシーンに彩りを添えている。

接待から慶事まで対応する個室空間
~特別な時間を演出する上質なおもてなし

「雲海」では、お座敷個室3室とテーブル個室5室を完備している。庭園を望む個室は落ち着いた雰囲気に包まれ、周囲を気にせずゆったりと食事を楽しめることから、多くの利用客に支持されている。

企業の接待や商談、会食はもちろん、結納や顔合わせ、長寿祝い、七五三、還暦祝いなど人生の節目となる大切な席にも利用されている。

日本庭園を眺めながら過ごす時間は、食事の場を超えた特別な思い出となるはず。ホテルならではのきめ細かなサービスと、日本料理店ならではの落ち着いた空間。その両方を兼ね備えている点も大きな魅力といえる。

40年の感謝を込めた特別会席
~歴史と未来をつなぐ記念メニュー

今回取材したのは、開業40周年を記念して提供される特別会席。昭和の時代に多くのゲストに親しまれた料理をベースにしながら、現代の技法や感性を取り入れ再構築された内容となっている。

40年という長い歴史の中で育まれてきた伝統への敬意と、未来へ向けた新たな挑戦。その両方を一皿ごとに表現した記念メニューは、節目の年にふさわしい内容。

多くのゲストに支えられてきた40年への感謝を込めた特別会席。ホテルの歴史と料理人の技術を一度に味わえる内容となっている。

実際にいただいた「ANAインターコンチネンタルホテル東京 日本料理雲海 開業40周年記念会席」の内容を、一品ずつ紹介します。

■日本料理 雲海
開業40周年記念特別会席 実食レビュー

・先付 縁・円相
水無月胡麻葛豆腐と蟹身
いろいろ小豆摺り流し
芋茎と板雲丹煮浸し 汲みあげ湯葉と梅おくら
粽生麩 麦わら蛸とおから 南瓜茶巾 鰆巻繊
莫久来と秋田新じゅんさい氷生姜酢

40周年という節目にふさわしく、「ご縁」と「円満」を意味する“縁・円相”をテーマに、美しく円を描くように盛り付けられた先付から会席はスタート。目にも華やかな一皿には、初夏の味覚が繊細に散りばめられている。

中央に据えられた水無月胡麻葛豆腐と蟹身は、なめらかでもっちりとした葛豆腐に胡麻の香ばしい風味が重なり、上品な甘みを持つ蟹身との相性が抜群。口に含むと涼やかな季節感とともに、やさしい旨みが広がる。


水無月胡麻葛豆腐と蟹身

いろいろ小豆摺り流しは、さまざまな豆の個性を一度に楽しめる趣向を凝らした一品。豆それぞれの風味や食感の違いが感じられ、日本料理ならではの繊細な表現力を楽しめる。


いろいろ小豆摺り流し

芋茎と板雲丹煮浸しは、特に印象的な逸品。芋茎に、濃厚な甘みと旨みを湛えた板雲丹が寄り添い、贅沢な味わいを生み出している。素材の持ち味を最大限に引き出した仕上がりに思わず箸が進む。


芋茎と板雲丹煮浸し

さらに、汲みあげ湯葉と梅おくらのやさしい口当たり、もちもちとした食感が楽しい粽生麩、旬を迎えた麦わら蛸とおから、可愛らしく仕立てられた南瓜茶巾、上品な旨みを閉じ込めた鰆巻繊など、一品ごとに異なる表情を楽しめる構成。

締めくくりの莫久来と秋田新じゅんさい氷生姜酢は、じゅんさいの瑞々しい喉越しと生姜酢の爽やかな酸味が心地よく、これから続く会席への期待を高めてくれる。

料理人の技と季節への敬意、そして40年の感謝の想いが詰まった先付は、40周年記念会席の幕開けにふさわしい一皿だった。

・御椀
梅雨仕立て
あじさい鱧 つる菜 根曲がり竹の子、梅肉

続いて供された御椀は、梅雨の季節感を繊細に表現した「梅雨仕立て」。蓋を開けた瞬間、上品な出汁の香りが立ち上り、料理人の丁寧な仕事ぶりが伝わってくる。主役となるのは、紫陽花を思わせる美しい仕立ての「あじさい鱧」。ふっくらとした鱧は口当たりがやわらかく、噛むほどに上質な旨みが広がる。

添えられたつる菜は瑞々しい食感が心地よく、根曲がり竹の子はシャキッとした歯触りと豊かな風味で存在感を放つ。具材一つひとつがしっかりとした味わいを持ちながらも、出汁との調和が見事で、季節の恵みを存分に感じさせてくれる。

そこに添えられた梅肉が絶妙なアクセント。爽やかな酸味が全体の味わいを引き締め、鱧の旨みや出汁の奥深さをより一層際立たせている。

・造り
本鮪 縞あじ 障泥烏賊 真鯛
芽物いろいろ 山葵 土佐醤油

造りは、大きな山葵の葉をあしらった印象的な演出で登場。葉をそっと取り除くと、本鮪、縞あじ、障泥烏賊、真鯛の4種が美しく盛り付けられた姿が現れる。

器にはたっぷりの氷が敷き詰められており、最後まで冷えた状態で楽しめるのも魅力。見た目にも涼やかで、夏の会席らしい趣を感じさせる一皿。

この日の料理の中でも特に印象に残ったのが鹿児島県産の本鮪だった。鮮やかな赤身は艶やかで美しく、口に運ぶと濃厚な旨みが広がる。しっとりとした舌触りと上質な味わいはさすがのひと言で、素材そのものの力強さを存分に感じられる。


鹿児島県産 本鮪

縞あじはほどよい脂のりと心地よい食感が楽しめるほか、障泥烏賊はねっとりとした甘み、真鯛は上品で端正な旨みが印象的。それぞれ異なる個性を持ちながらも、全体として高い完成度を誇る盛り合わせとなっている。

また、茄子や葉物のアオタツが添えられているのも嬉しいポイント。刺身の合間にいただくことで爽やかな清涼感が広がり、口の中をリセットしながら次の一切れをより美味しく味わうことができる。

素材の質の高さはもちろん、演出や温度管理にまで細やかな配慮が行き届いた一皿。ホテル開業40周年記念会席にふさわしい、華やかで完成度の高い造りでした。

・進肴
近江牛と京揚げ 花山椒葛煮

進肴として登場したのは、近江牛と京揚げを合わせた温かみのある一品。美しく盛り付けられた近江牛と京揚げの上には、透明感のある葛餡と花山椒があしらわれており、見た目にも上品な仕上がり。ひと口いただくと、花山椒の爽やかな香りと心地よい刺激が広がり、近江牛の繊細な旨みを一層引き立ててくれる。

近江牛は非常にきめ細やかな肉質で、口当たりは驚くほどなめらか。シルキーとも表現したくなる上質な食感と上品な脂の甘みは、日本人の味覚によく寄り添う味わいだ。濃厚でありながら重たさはなく、素材本来の美味しさをしっかりと感じられる。

一方の京揚げは出汁の旨みをたっぷりと含み、近江牛とは異なる食感と風味を楽しませてくれる。両者が交互に配置されていることで、それぞれの持ち味を味わいながら食べ進められる構成も見事。牛肉の旨み、京揚げのやさしい味わい、そして花山椒のアクセントが一体となり、絶妙なバランスを生み出している。

伝統的な和の技法と近江牛という上質な素材を組み合わせた、記念会席ならではの贅沢な一皿した。

・焼物
金目鯛薫風新茶味噌 稚鮎南蛮 新牛蒡金平
野蕗伽羅煮 山桃蜜煮 花茗荷

焼物は、初夏の訪れを感じさせる季節の味覚を美しく盛り込んだ一皿。主役の金目鯛は、香ばしく焼き上げられた皮目が実に印象的。ひと口頬張ると、皮目の芳ばしい風味とふっくらとした身の上質な脂が広がり、その美味しさに思わず箸が進む。添えられた薫風新茶味噌は、新茶ならではの爽やかな香りとほのかな渋みが感じられ、金目鯛の旨みを上品に引き立てている。

稚鮎南蛮は鮎らしいほろ苦さと南蛮漬けの程よい酸味が心地よく、新牛蒡金平はシャキシャキとした食感と豊かな香りが楽しめる。さらに野蕗伽羅煮の深みのある味わい、山桃蜜煮のやさしい甘みが加わり、一皿の中でさまざまな味わいの変化を堪能できる構成となっている。

また、添えられた花茗荷が絶妙なアクセント。爽やかな香りとほのかな辛みが口の中をすっきりと整え、次のひと口をより美味しく感じさせてくれる。

・炊き合わせ
蛍烏賊と桜海老 玉子とじ 淡路新玉葱 木の芽

続いて登場した一品は、ホテル開業40周年という節目に込められた想いが色濃く表現された料理。先付と同様に「縁」と「円」をテーマに構成されている。吉安健料理長は「お世話になった40年のご縁を大切にしたかった」と語り、その想いを一皿に込めた。


吉安健 料理長

また、1986年の開業当時は玉子とじ料理が多く提供されていたことから、その時代へのオマージュとして本料理を考案。当時の記憶を現代の技法と感性で再構築した40周年記念会席ならではの一皿である。

目の前に運ばれてきた料理は湯気を立てる熱々の状態。ふんわりと仕上げられた玉子が蛍烏賊や桜海老を優しく包み込み、ひと口いただくと豊かな旨みが口いっぱいに広がる。特に桜海老の香ばしい風味と玉子のまろやかな味わいの相性は抜群で、思わず笑みがこぼれる美味しさ。

蛍烏賊の凝縮された海の旨み、淡路新玉葱のやさしい甘みも見事に調和し、木の芽の爽やかな香りが全体を上品にまとめ上げている。

40年の歴史への敬意と感謝、そして未来へ受け継ぐ想いが込められた炊き合わせ。どこか懐かしさを感じながらも、洗練された味わいを楽しめる印象深い一品であった。

・食事
初かつおの胡麻茶漬け 薬味
土瓶に嬉野出汁茶 香の物

食事として供されたのは、初夏の味覚を楽しめる「初かつおの胡麻茶漬け」。美しく盛り付けられた初かつおには香り高い胡麻が添えられ、まずはそのまま素材の味わいを楽しみたくなる仕立て。初かつお特有のさっぱりとした旨みと胡麻の豊かな風味が調和し、食事の締めくくりにふさわしい上品な味わいを演出している。

この料理の魅力は、目の前で土瓶に用意された嬉野出汁茶を注いで完成させること。湯気とともに立ち上る出汁の香りが食欲を誘い、自ら仕上げる楽しさも味わえる。お茶漬けならではのライブ感があり、会席の最後を彩る演出としても印象的。

出汁茶を注ぐことで、初かつおの旨みと胡麻のコクが一体となり、さらりとしながらも奥行きのある味わいへと変化。薬味が爽やかなアクセントとなり、一口ごとに異なる表情を楽しませてくれる。

添えられた香の物も程よい箸休めとなり、全体の味わいを引き締める存在。温かな出汁とともにいただくことで心まで満たされるような、会席の締めにふさわしい食事でした。

・水菓子

昭和のぷりんあらもーど

または

雲海かき氷 季節の果物いろいろ
(抹茶・しろくま風・とまと より選択)
※オプション:スイーツブッフェ 追加料金 ¥2,000

水菓子は、「昭和のぷりんあらもーど」または「雲海かき氷」から選べる趣向。40周年記念会席らしく、ホテルの歴史を感じさせる一品と、長年愛され続ける人気デザートのどちらかを楽しめる。

今回いただいた「昭和のぷりんあらもーど」は、その名の通りどこか懐かしさを感じさせる仕上がり。プリンは近年主流のとろけるタイプではなく、適度な固さを残した昔ながらの食感で、卵の風味をしっかりと感じられる王道の味わいだ。上には旬のさくらんぼが添えられ、彩りと季節感を演出。昭和から令和へと受け継がれてきたホテルの歴史を感じさせるデザートとなっている。


昭和のぷりんあらもーど

一方の「雲海かき氷」は、年間を通じて提供されている人気メニュー。今回は抹茶としろくま風の中から抹茶を選択した。なお、とまと味は季節限定で、この時期だけ楽しめる特別なフレーバーだという。


雲海かき氷:抹茶

運ばれてきたかき氷は見た目以上に氷の量がたっぷり。すぐに溶けてしまわないよう計算された設計となっており、最後までゆっくりと味わえるのが嬉しい。雲海かき氷は一般的なシロップを使用せずに仕上げているため、後味が非常にすっきりとしているのが特徴。そのため甘さが重たくならず、食後でも軽やかに楽しめることから、年配の男性客からも高い支持を集めている。

会席の締めくくりにふさわしく、どちらを選んでもホテルの歴史やこだわりを感じられる水菓子。最後まで心地よい余韻を残してくれる一品であった。

■40周年記念を彩るドリンクセレクション
~開業年ヴィンテージとともに味わう特別な一杯~

ANAインターコンチネンタルホテル東京の開業40周年記念企画では、特別会席とともに楽しめるドリンクセレクションも魅力のひとつとなっている。

なかでも注目は、ホテルが誕生した1986年のヴィンテージワイン。40年という歳月をともに重ねてきた一本を味わうことで、料理だけでなくホテルの歴史そのものを体感できる。

日本料理「雲海」では、開業40周年記念会席に合わせて開業年のヴィンテージワイン「シャトー・プリュレ・リシーヌ1986」をグラスで提供。通常、長期熟成ワインはボトル単位での提供が多いなか、グラスで気軽に楽しめるのは非常に貴重な機会といえる。

40年という年月を経たワインは、単なる飲み物ではなく“時を味わう体験”そのもの。昭和から平成、令和へと歩み続けてきたホテルの歴史と重ね合わせながら楽しめるのが、この記念企画ならではの魅力である。

会席料理のなかでも、近江牛と京揚げ 花山椒葛煮や金目鯛薫風新茶味噌といった旨みの強い料理との相性は特に良く、熟成を重ねたワインならではの奥行きある味わいが料理の魅力をさらに引き立ててくれる。

料理人の技が込められた40周年記念会席と、同じ時代を歩んできた1986年ヴィンテージワイン。歴史と美食が交差する特別なマリアージュを堪能できる貴重な機会となっている。

・シャトー・プリュレ・リシーヌ1986

グラスに注がれた「シャトー・プリュレ・リシーヌ1986」は、まずその美しい色合いに目を奪われる。

40年近い熟成を経たワインらしく、深みのあるガーネットカラーが印象的。中心部にはしっかりとした色調を残しながらも、縁には熟成由来のレンガ色がほのかに現れ、長い年月を物語る風格を感じさせる。

グラスを傾けると、ブルーベリーやブラックベリーを思わせる黒系果実のアロマがゆっくりと立ち上る。その奥には杉や葉巻、湿った土、ほのかなスパイスのニュアンスも感じられ、熟成ボルドーらしい複雑で奥行きのある香りが広がる。

口に含むと、まず驚かされるのは果実味の瑞々しさだ。熟成ワインというと枯れた印象を想像しがちだが、この1986年ヴィンテージは活き活きとした果実の表情をしっかりと残している。ブラックベリーやカシスを思わせる凝縮感のある果実味が広がり、その後を追うように上質な熟成香がゆったりと重なっていく。

タンニンは長年の熟成によって見事に溶け込み、非常になめらか。角の取れたシルクのような口当たりが心地よく、ワイン全体に優雅な印象を与えている。酸味とのバランスも美しく、重厚感がありながら決して重たく感じさせない。飲み進めるごとに複雑な表情を見せ、熟成ワインならではの魅力を存分に楽しませてくれる。余韻は非常に長く、黒果実やスパイス、熟成香が幾重にも重なりながらゆっくりと消えていく。その余韻の美しさはまさに40周年記念企画を象徴する一本にふさわしい完成度であった。

今回いただいた会席料理との相性も見事で、とりわけ近江牛と京揚げ 花山椒葛煮とのペアリングは印象的。近江牛の上品な旨みと熟成したタンニンの柔らかな質感が調和し、互いの魅力を高め合っていた。

1986年という同じ時代を共有してきたホテルとワイン。その歴史に思いを馳せながら味わう一杯は、ペアリング体験を超えた特別な時間を演出してくれる。
40周年という節目だからこそ実現した、一期一会のヴィンテージ体験であった。

・獺祭飲み比べセット
~磨きの違いが生み出す、獺祭の奥深い世界~

会席料理とともに楽しみたいのが、日本酒の魅力を存分に味わえる「獺祭飲み比べセット」。

「獺祭Blue 50 from NY」「獺祭純米大吟醸45」「獺祭純米大吟醸三割九分」の3種を60mlずつ飲み比べできる内容となっているが、この日は中央にラインアップされていた「獺祭純米大吟醸45」が品切れとのこと。その代わりとして、より上位グレードにあたる「獺祭 花冷え酒」が提供された。

まず印象的だったのは、ニューヨークの酒蔵で醸造された「獺祭Blue 50 from NY」。獺祭らしい透明感のある酒質を持ちながらも、どこか軽快でモダンな印象。爽やかな果実香とすっきりとした飲み口が特徴で、海外市場を意識した獺祭の表現を感じさせる一本だ。

続いていただいた「獺祭 花冷え酒」は、華やかな吟醸香が際立つ上品な味わい。口当たりは非常になめらかで、やわらかな甘みと透明感のある旨みが美しく広がる。余韻は繊細でありながら心地よく、会席料理の味わいを邪魔することなく寄り添ってくれる。

最後は「獺祭 純米大吟醸 三割九分」。精米歩合39%まで磨き上げた米から生まれる味わいは非常に洗練されており、香り、旨み、キレのバランスが秀逸。果実を思わせる上品な香りが広がった後、雑味のないクリアな旨みが続き、最後はすっと消えていく。

3種を飲み比べることで、精米歩合や醸造環境の違いが生み出す味わいの変化を体感できるのが大きな魅力。それぞれに個性がありながらも、共通して感じられるのは獺祭ならではの透明感と美しい酒質である。

日本料理「雲海」の繊細な会席料理との相性も抜群で、特に御椀や造りと合わせることで、日本酒が持つ旨みと料理の出汁の美味しさが相乗効果を生み出していた。

・グレナデン ラブベリー シャーリー
~華やかな彩りが映える大人のノンアルコールカクテル~

アルコールを飲まない方におすすめしたいのが、ノンアルコールカクテル「グレナデン ラブベリー シャーリー」。

グラスに注がれた鮮やかなルビーレッドの色合いが美しく、テーブルを華やかに彩ってくれる一杯。グレナデンシロップとラズベリーシロップをベースに、ジンジャーエールを合わせたシンプルな構成ながら、味わいは非常にバランスが良い。

まず感じるのはラズベリー由来の甘酸っぱい果実感。そこへグレナデンのやさしい甘みが重なり、後半にはジンジャーエールの爽快な刺激が心地よく広がる。
甘みはしっかりありながらも重たさはなく、後味は驚くほどすっきり。会席料理の合間にいただくことで口の中をリフレッシュしてくれるため、食中ドリンクとしても優秀な存在である。

見た目の華やかさと飲みやすさを兼ね備えており、アルコールを控えている方はもちろん、食事を中心に楽しみたい方にもおすすめしたい一杯。日本庭園を眺めながら味わうその時間は、ホテルならではの優雅なひとときを演出してくれる。

<料理長 プロフィール>

吉安 健 よしやす たけし
日本料理「雲海」料理長


吉安健 料理長

1967 年 4 月 24 日、福岡県北九州市生まれ。
1994 年 4 月より、都内有名ホテルの日本料理店のオープニングスタッフとして入社し 2 年間勤務。
1996 年 5 月、東京・赤坂の老舗料亭「鶴よし」に副料理長として入り、翌年から 15 年間料理長を務めた。
2013 年 1 月 15 日付で、ANA インターコンチネンタルホテル東京が直営する日本料理「雲海」の料理長に就任、現在に至る。
古き物に魅力を見出し、その歴史にふれることが好きで、古い器にまつわるストーリーを交えながら自慢の料理を振る舞うことを喜びとする。一方では現代感覚を持ち合わせ、多くの外国人ゲストを迎えるインターナショナルなホテル内日本料理店としての新たな表現法についても余念がない。
ホテルの歩みとともに 40 年の歴史をもつ「雲海」3 代目料理長として益々の活躍が期待される。
(2026 年 6 月現在)

日 本 料 理 「雲 海」 (UNKAI Japanese Restaurant)

○場所 3 階
○開業 1986 年 6 月 7 日(ホテル開業日)
○営業時間 昼 11:30~15:30 (13:30L.O.) 夜 17:00~22:00 (19:30L.O.)
○定休日 月曜/日曜のディナー
○席数 120 席 ※全席禁煙
テーブル個室 5 室(2~24 名/室料 昼 5,000 円/夜 5,000 円・10,000 円)
お座敷 3 室(2~4 名/室料 昼 5,000 円・夜 10,000 円)
○特徴
美しい庭園を愛でながら、しっとりとした日本情緒の中で、心ゆくまで日本料理の粋をご堪能いただける料理店。

永年にわたり、様式美に満ちた伝統的会席料理から季節の一品料理まで、器・素材・盛り付け、そして味わい、すべてに繊細なまでのこだわりを追求し、お客様より高い評価をいただいております。

静かな室内に面した庭園は、旧芝離宮の恩賜庭園を模し、「四季八方見」*という考え方を取り入れた都内有数の人工地盤庭園(360 ㎡)で、滝の流れる広い池を擁しています。かつて渡り鳥の通過点であった離宮のように「広く世界から訪れる多くの旅客が羽を休める場所となるようなホテルに」との願いを込めて設計されました。

お座敷 3 部屋、テーブル個室 5 部屋を有し、会食や商談をはじめ、各種集いの席、結納やお祝い事などご家族の記念行事ほか幅広い目的でご利用いただけます。庭園内で記念写真を撮っていただくことも可能です。一般席及びお座敷も含め、庭園側はすべて全面ガラス壁の造りになっており、広い角度で日本庭園の美しさをご堪能いただけます。

*「四季八方見」…1年を通じて、季節ごとの草花がひっそりとした趣で移り咲き、自然な形で四季折々の風情を観賞できること。

【移り咲く季節の花々】

季節の草花をお楽しみいただくため、2つの方法を取っています。一つは、「景観演出(修景植栽)」で、季節ごとに植え込みをして演出すること、そしてもう一つは「季節景観」で、植えられている木々が季節ごとに花や実をつけることです。

〇人気メニュー

■「彩り膳&和スイーツブッフェ」
旬の食材の香りの豊かさや食感を生かした一品一品を、風情のある器に個々に盛りつけ、白木の角盆に並べた彩り豊かな料理。和と洋を織り交ぜたデザートブッフェがセットになっています。
■会席料理(各種)
料理長吉安健の感性と技が光る、一皿ひと皿に季節の趣が映し出されたような珠玉の逸品を、「御椀」「お造り」「焼物」「煮物」など全 7~8 品の流れでご堪能いただけます。
■会席料理の「水菓子」として提供する「雲海」特製かき氷
氷にこだわり、シロップ(甘味料)は使用せず、季節ごとの果物のフレッシュな味わいと素材が持つ自然な甘みを生かした多彩なかき氷を、年間を通じて提供。
■御祝いプラン(4 名様より) お 1 人様 22,000 円~ ※会席料理・乾杯ドリンク・個室料が含まれます

【お問い合わせ・ご予約】 レストラン予約 TEL. 03-3505-1185
【所在地】 ANAインターコンチネンタルホテル東京
〔英語表記: ANA InterContinental Tokyo〕
〒107-0052 東京都港区赤坂 1-12-33
TEL. 03-3505-1111
https://anaintercontinental-tokyo.jp/
[アクセス] 東京メトロ銀座線・南北線「溜池山王」駅下車徒歩約 5 分

■ANAインターコンチネンタルホテル東京
ANA InterContinental Tokyo

The Essence of Tokyo
あなただけの東京体験を、ここから。

ANAインターコンチネンタルホテル東京【地上 37 階/客室数 801 室/13 のレストラン&バー/大小 22 の宴会場】は、赤坂・六本木・霞が関まで各徒歩圏内という東京の中心部に位置し、周辺には中央官庁、各国大公使館、内外の一流企業など、国際的な政治経済の中枢機能が集結しています。

地上 37 階、801 室を擁する当ホテルは、エネルギーに満ちた「東京」の街と同様に進化を続け、「訪れるたびに新しく、心わきあがるような体験」の創出を目指しています。

2024 年には全カテゴリーを対象とした大規模な改装を完了し、洗練された空間デザインとプレミアムアメニティを備えた、より上質な滞在体験を提供。また、館内13のレストラン&バーは、2024 年にリニューアルした「カスケイドカフェ」と「アトリウムラウンジ」、新たに誕生した「ジュネヴァ ロビーバー」とともに、革新的なダイニングシーンを演出しています。

35階及び新たに36 階に拡張した国内最大級の広さ(約 900 平米)を誇る宿泊客専用ラウンジ「クラブインターコンチネンタル」からは、皇居、国会議事堂、富士山など東京都心の絶景を一望。さらに大小 22 の宴会場を備え、日本的なおもてなしの心と国際水準のサービスが調和した、真のインターナショナルホテルとして進化を続けています。

【ご予約・お問い合わせ】
ANAインターコンチネンタルホテル東京
TEL.03-3505-1111(代表)

〒107-0052 東京都港区赤坂1-12-33
https://anaintercontinental-tokyo.jp
<アクセス>東京メトロ銀座線・南北線「溜池山王」駅下車徒歩約5分