【実食レポ】鰹節から始まる美食体験。「鮨匠 一石三鳥」で味わう出汁の美学

渋谷・円山町に誕生した話題の鮨店、「鮨匠 一石三鳥」。

一石三鳥グループが新たに手掛けるこの一軒は、“鮨”だけに留まらず、日本食文化の根幹ともいえる「出汁」を主役に据えた、五感で味わう鮨体験を提案しています。

神泉駅からほど近い路地裏に佇む店内へ一歩足を踏み入れると、そこには渋谷の喧騒を忘れさせる静謐な空間が広がります。木の温もりを感じるカウンターと、凛とした空気感。肩肘張りすぎない居心地の良さがありながら、特別感もしっかり漂う“大人の隠れ家”です。

今回いただいたのは、「出汁」を軸に構成されたおかませスタンダードコース。

コースの幕開けは、目の前で鰹節を削るライブパフォーマンスから始まります。鉋がリズミカルに奏でる音とともに、削りたてならではの芳醇な香りがふわりと広がり、その場の空気が一気に研ぎ澄まされていく感覚に。削りたての鰹節は、わずか5分ほどで香りが変化してしまうほど繊細なのだとか。そんな一瞬の“最高の状態”を味わえるのも、このコースならではの魅力です。

・先付け:一番出汁のテイスティング

コースの幕開けは、“出汁”というテーマを象徴する一杯から。
この日使用するのは、香り高い本枯節に加え、羅臼昆布、ドンコ、アゴ(トビウオ)の丸干しなど、旨味を支える厳選素材たち。まずはそれぞれの特徴や役割について丁寧な説明があり、料理への期待感が自然と高まっていきます。

印象的なのが、目の前で披露される鰹節削りのパフォーマンス。鉋で削るたびに、ふわりと立ち上る芳醇な香りがカウンターを包み込み、五感が一気に研ぎ澄まされていく感覚に。削りたての鰹節をそのまま口にすると、驚くほど軽やかな口当たりと繊細な旨味が広がります。


削りたての鰹節

その後、目の前で丁寧に漉された一番出汁をいただく流れもライブ感たっぷり。

昆布のグルタミン酸と、鰹節のイノシン酸。ふたつの旨味が重なり合い、澄んだ余韻を生み出します。単なる“食事”ではなく、日本料理の根幹を体験するような時間でした。

・スペシャリテ:マグロとキャビアの冷製出汁

このコースを象徴するスペシャリテともいえる一皿。旨味豊かな冷製出汁をベースに、濃厚なマグロの赤身とキャビアを重ねた一品は、和食の繊細さとモダンな感性が見事に融合しています。

印象的なのは、出汁の香り立ち。冷製でありながら旨味の輪郭がしっかりと感じられ、口に含んだ瞬間、ふわりと上品な余韻が広がります。そこにマグロの濃密な赤身の旨味、キャビアの塩味とコクが重なり、非常に完成度の高い味わいに。

さらに、隠し味として忍ばせたエシャロットが秀逸。シャキシャキとした食感と爽やかな香りがアクセントになり、出汁のジュレとともに軽やかな余韻を演出しています。濃厚になりすぎず、最後まで心地よく食べ進められる絶妙なバランス感も魅力。

仕上げに冷たい出汁を注ぐ演出も美しく、視覚的な高揚感まで含めて楽しめる、“体験型”のスペシャリテでした。

・八寸:五味を表現した季節の一皿

八寸は、「甘味・酸味・塩味・苦味・旨味」の“五味”をテーマに構成。
一皿の中に異なる味わいを巧みに織り込み、コース全体にリズムと奥行きを与えています。

並ぶのは、新タマネギ豆腐、稚鮎の南蛮漬け、アイコトマトの出汁漬け、万願寺唐辛子とマグロのみぞれ和え、牡蠣と空豆の白和えなど、旬を感じるラインナップ。

中でも印象的だったのが、新タマネギ豆腐。新玉ねぎをフライパンでじっくりローストし、低温で丁寧に火入れすることで、驚くほど自然な甘味を引き出しています。まるで豆腐のようになめらかな口当たりでありながら、玉ねぎ本来のコクと香ばしさもしっかり感じられる一品でした。


新タマネギ豆腐

稚鮎の南蛮漬けは、鮎特有のほろ苦さと酸味のバランスが絶妙で、初夏らしい爽やかさを演出。一品ごとに異なる表情を持ちながらも、“出汁”という軸が全体を美しく繋いでいる。そんな完成度の高い八寸でした。

出汁が導く、鮨の新体験:


アオリイカ

握りの一貫目から、職人の繊細な技術が光ります。アオリイカには丁寧に隠し包丁が施されており、ねっとりとした甘みを引き出しながらも、心地よい歯応えをしっかりと残した絶妙な仕上がり。噛み締めるたびにイカ本来の旨味が広がり、シャリとの一体感も見事です。派手さではなく、“丁寧な仕事”の積み重ねで魅せる一貫でした。


平目の昆布〆

丁寧に昆布締めされた平目は、もっちりとした食感の中に凝縮された旨味が際立つ一貫。昆布の旨味が平目の淡白な甘みを引き立て、噛むほどにじわじわと余韻が広がっていきます。繊細ながら存在感があり、“出汁”をテーマに掲げるこのコースらしい、静かな奥行きを感じさせる握りでした。


甘エビ

特に印象的だったのが甘エビ。細かく叩いてねっとりとした質感に仕上げることで、舌に触れる面積が増し、甘海老本来の濃厚な甘みをダイレクトに感じられます。

通常のぷりっとした食感とは異なり、まるでクリームのように舌の上でとろけていく感覚が新鮮。そこにシャリのほどける食感が重なることで、食感のコントラストも楽しめる一貫に仕上がっていました。

やま幸から仕入れた宮城県塩釜産の本鮪は、赤身からして圧巻。


やま幸仕入れ 宮城県塩釜産 本鮪

しっとりとした質感の中に、鮪本来の濃厚な旨味と鉄分を感じる力強い味わいがあり、噛むほどに余韻が広がります。


宮城県塩釜産 本鮪 赤身

シャリには「雪若丸」を使用。粒立ちが良く、ほどけるような口当たりで、鮪の旨味をしっかりと受け止めながらも主張しすぎない絶妙なバランスでした。


小肌

江戸前鮨の真髄ともいえる小肌。塩と酢の締め加減が非常に繊細で、酸味を立たせすぎず、魚本来の旨味をしっかり感じさせる仕上がりです。口に入れた瞬間のしなやかな食感と、後から追いかけてくる香りの余韻が心地よく、職人の細やかな仕事ぶりが伝わる一貫でした。


宮城県塩釜産 本鮪 中トロ

中トロは、思わず笑みがこぼれる美味しさ。大判にカットされた中トロでシャリを包み込むように握ることで、口に入れた瞬間、脂の甘みと鮪の旨味が一気に広がります。

脂はしつこさがなく、体温でじんわりと溶けながら上品な甘みへと変化。シャリとの温度差や口どけまで計算されており、鮪のポテンシャルを最大限に引き出した完成度の高い一貫でした。


黒ムツ

炭で香ばしく炙られた黒ムツは、この日の握りの中でも特に印象深い存在。表面の香ばしさが立ち上がる一方で、厚みのある身はふっくらと柔らかく、淡白ながら上品な脂の旨味をしっかり感じさせます。

炙りによる香りと、黒ムツ特有の繊細な旨味のバランスが絶妙で、噛むたびに旨味が広がる贅沢な一貫でした。

最後は、雲丹・大トロ・ボタン海老から選べる贅沢なチョイス。今回は北海道産の雲丹をいただきました。


北海道産 雲丹

今回は北海道産の雲丹をいただきました。


北海道産 雲丹

ひと口食べた瞬間、濃密でクリーミーな甘みが口いっぱいに広がり、雑味のない澄んだ旨味に思わずうっとり。海苔の香ばしさとシャリの温度感も絶妙で、雲丹の持つとろけるような余韻をより一層引き立てています。

コース終盤を締めくくるにふさわしい、幸福感に満ちた一貫でした。

・鰻(白焼き・蒲焼)

鰻は白焼きと蒲焼きからひとつ選べるスタイル。今回は蒲焼きをいただきましたが、香ばしく焼き上げられた皮目と、ふっくらとした身のコントラストが秀逸。甘辛いタレのコクが鰻の脂と見事に重なり、思わず頬が緩む美味しさです。

白焼きは素材本来の旨味をよりダイレクトに楽しめるとのことで、次回はぜひ食べ比べもしてみたいところ。選ぶ楽しさがあるのも、このコースの魅力のひとつです。

・キンカン手巻き

コース終盤に登場するキンカン手巻きは、まさに“背徳感”と“上品さ”が共存する贅沢な一品。濃厚な旨味を持つ鶏のキンカンが、とろけるようなトロと重なり合い、口の中でまろやかなコクへと変化していきます。

そこにパリッとした海苔の香ばしさが加わることで、香り・食感・旨味のバランスが一気に完成。手巻きというカジュアルなスタイルでありながら、細部まで計算された完成度の高い一品でした。

・出汁いなり

このコースの中でも、深い印象に残ったのが“出汁いなり”。一般的な稲荷寿司とはまったく異なるアプローチで仕立てられており、一口食べた瞬間、その独創性に驚かされます。

主役となる揚げは、椎茸の旨味を含んだ出汁をたっぷりと吸わせたもの。噛むたびにじゅわっと出汁が溢れ出し、口いっぱいに優しい旨味が広がります。

これまで食べてきた稲荷寿司の概念を覆すような、“出汁を味わうための稲荷寿司”。記憶に残る逸品です。

・蛤出汁のうどん

締めとして提供される蛤出汁のうどんも、最後まで抜かりのない美味しさ。大ぶりの蛤から丁寧に引き出された出汁は、優しくも奥深い旨味があり、コース終盤の身体にじんわりと染み渡ります。

口に含むたびに、蛤特有の上品な甘みと潮の香りが広がり、どこかほっとするような味わい。派手さはないものの、“最後に食べたい一杯”として非常に完成度が高く、コース全体を穏やかに締めくくってくれます。

鮨や一品料理で高まった余韻を壊すことなく、静かに着地させるような美しい締めの一杯でした。

・抹茶と甘味

コースのフィナーレを飾るのは、目の前で点てられる抹茶と甘味。茶筅で丁寧に点てられる所作まで含めて演出となっており、最後の最後まで“日本文化を体験する時間”として楽しませてくれます。

抹茶は器を自分で選べるという遊び心もあり、器によって印象が変わるのも面白いポイント。点てたてならではの豊かな香りとほろ苦さが、コースの余韻をゆっくりと整えてくれます。

合わせる甘味は、苺と白あんの羊羹。白あんの優しい甘みと苺の爽やかな酸味が絶妙に調和しており、抹茶の苦味とも美しくマッチ。和と洋のエッセンスを程よく融合させた、上品なデザートに仕上がっていました。

鮨匠 一石三鳥で感じた“出汁の美学”

鮨匠 一石三鳥は、単なる“高級鮨店”という枠には収まらない一軒でした。鮨の完成度はもちろんのこと、この店ならではの魅力は、やはり“出汁”を軸にコース全体を構築している点。削りたての鰹節から始まり、一番出汁、冷製出汁、出汁いなり、蛤出汁のうどんに至るまで、随所に日本料理の根幹である旨味の美学が散りばめられています。

さらに、目の前で仕上げるライブ感や器の美しさ、抹茶を点てる所作まで含めて、五感で楽しませてくれる構成も秀逸。約120分という時間の中で、“食事”ではなく“体験”として記憶に残るコースに仕上がっていました。

接客は親しみやすく、空間にはほどよい高級感があり、肩肘張りすぎない居心地の良さも魅力。記念日や会食はもちろん、「大切な人を連れて行きたくなる店」としても非常に満足度が高い一軒です。

渋谷の中心にありながら、静かに日本の食文化と向き合える。出汁の可能性を再発見できる一軒でした。

■鮨匠 一石三鳥

渋谷円山町に誕生する「鮨匠 一石三鳥」は、「世界が旅をする理由をつくる」というグループのミッションを体現する新たな鮨業態です。

全国から届く海中神経締めの魚や、独自のセントラルキッチン体制により鮮度を最大限に保持。120分で凝縮された鮨体験を楽しめる設計とし、コースは希少なネタを中心に構成します。

営業時間:17:00~22:30
住所:東京都渋谷区円山町5-10 2F
電話番号:03-6427-8577

アクセス:

・京王井の頭線 神泉駅 徒歩3分
・JR・東京メトロ各線 渋谷駅 徒歩7分

■代表・米田拓史 氏コメント


代表取締役 米田 拓史 氏

「私たちは、ただの飲食企業ではありません。
“日本へ行く”ではなく、“一石三鳥へ行くために日本へ行く”。

そんな未来を本気でつくりにいきます。

高級鮨の価値が高まる一方で、もっと多くの方に手の届く贅沢を届けたい。
今回のプロジェクトが、皆様の”元気が出る体験”になれば幸いです。」