2026年7月25日、「フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2026」が、恒例の東京交響楽団オープニングコンサートで華やかに開幕した。今年は東京交響楽団第4代音楽監督に就任したロレンツォ・ヴィオッティにとって初となる記念すべきサマーミューザ。新章の幕開けにふさわしい、色彩豊かなプログラムが披露された。

撮影:池上直哉/提供:ミューザ川崎シンフォニーホール
音楽祭の開幕を告げる祝祭の響き

撮影:池上直哉/提供:ミューザ川崎シンフォニーホール
冒頭を飾ったのは三澤慶《音楽のまちのファンファーレ》。毎年フェスタの開幕を告げるこの作品を、今年はホールのステージで披露。ヴィオッティは堂々としたスケール感と豊かな響きを引き出し、音楽祭の幕開けを鮮やかに演出した。
続くドビュッシー《牧神の午後への前奏曲》は、印象主義音楽の出発点ともいわれる名作。冒頭のフルート・ソロが幻想的な世界へと誘い、繊細な色彩感で作品全体が描かれていく。
首席奏者たちが輝いた《スペイン奇想曲》

撮影:池上直哉/提供:ミューザ川崎シンフォニーホール
リムスキー=コルサコフ《スペイン奇想曲》は、スペイン民謡をもとにした華麗な管弦楽作品。各楽器のソロが次々に登場し、「オーケストラ・ショーピース」の代表作として親しまれている。
コンサートマスター小川ニキティングレブをはじめ、クラリネット、ホルン、ハープなど首席奏者たちが見事なソロを披露。ヴィオッティは華やかさ一辺倒ではなく、細やかなニュアンスを積み重ねることで作品の色彩感をより鮮明に浮かび上がらせた。
《シェエラザード》が描く壮大な音楽絵巻

撮影:池上直哉/提供:ミューザ川崎シンフォニーホール
後半は、リムスキー=コルサコフの代表作《シェエラザード》。『千夜一夜物語』に着想を得た作品は、暴君シャフリヤール王に毎夜物語を語り聞かせ、自らの命をつないだ王妃シェエラザードを音楽で描いた傑作。作曲者自身は特定の物語を描写することを意図してはいないが、「海とシンドバッドの船」「カランダール王子の物語」「若い王子と王女」「バグダッドの祭り」といった幻想的な情景を思わせる4つの楽章が、絢爛たるオーケストレーションによって次々と繰り広げられる。
小川ニキティングレブの気品あるソロを軸に、チェロや木管、金管の首席奏者たちも存在感を発揮。《シェエラザード》はオーケストラそのものの総合力が問われる作品だが、木管、金管、ハープ、チェロなど首席奏者たちが次々とソロを受け渡しながら、多彩な物語を描いていく。
東京交響楽団はその高い機能性と豊かな音色で作品の魅力を余すことなく表現。第3楽章では弦楽器が柔らかく歌い、若い王子と王女の優雅な情景を繊細に描写。終楽章では祝祭の熱気と荒れ狂う海が交錯する壮大なクライマックスを圧倒的な推進力で築き上げ、最後は静かに回帰するシェエラザードの主題が、物語の余韻を美しく締めくくった。

撮影:池上直哉/提供:ミューザ川崎シンフォニーホール
ヴィオッティの指揮は、リムスキー=コルサコフならではの華麗な色彩感を存分に生かしながらも、決して響きの美しさだけに終始しない。細部まで緻密に設計されたアンサンブルと、大きな構築感を兼ね備えた音楽づくりによって、約45分に及ぶ大作を一つの壮大な音楽絵巻として描き切った。音楽監督就任からまだ数か月とは思えないほど東京交響楽団との呼吸は自然で、深い信頼関係が音楽そのものとなって客席へ届けられた。
フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2026の華やかな開幕を告げるとともに、新音楽監督ロレンツォ・ヴィオッティと東京交響楽団がこれから紡いでいく新たな音楽への期待を、大きく膨らませる記念碑的な公演となった。

撮影:池上直哉/提供:ミューザ川崎シンフォニーホール
■フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2026
東京交響楽団 オープニングコンサート
輝かしき船出、新たな冒険の始まり——
日時:2026.7.25(土) 15:00開演
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール
出演
ロレンツォ・ヴィオッティ(東京交響楽団 音楽監督)
<オープニング・ファンファーレ>
三澤 慶:「音楽のまちのファンファーレ」~フェスタサマーミューザKAWASAKIに寄せて
ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
リムスキー=コルサコフ:スペイン奇想曲 op.34
リムスキー=コルサコフ:交響組曲『シェエラザード』 op.35



