【公演レポ】清塚信也、技巧と感性が交錯したラヴェル!〈東京フィル「平日の午後のコンサート」〉

クラシック×トーク=「平日午後」の特別な時間

平日午後のリラックスした時間にぴったりの、東京フィルの人気企画「平日の午後のコンサート」。第40回という節目を迎えた今回は、指揮・トークの円光寺雅彦と、ピアニスト・タレントとしても活躍する清塚信也の鉄板コンビが登場。会場は平日とは思えないほどの満席で、リピーターの多さとこのシリーズの人気ぶりが伺えた。


提供=東京フィルハーモニー交響楽団

清塚信也の演奏で幕を開けたのは、ブラームスのハンガリー舞曲第1番。今回は特別にピアノ入りヴァージョンが披露され、清塚の演奏スタイルには、師である中村紘子からの影響が色濃く感じられた。


提供=東京フィルハーモニー交響楽団

旋律をまるで歌うように奏でる清塚のピアノは、情熱と哀愁を兼ね備え、多くの聴衆の心を掴みました。譜面通りの演奏に留まらず、独自の自由な解釈と豊かな感情表現が、クラシックの魅力を一層引き立てた。

清塚信也、念願のラヴェル ピアノ協奏曲を披露


提供=東京フィルハーモニー交響楽団

続いて演奏されたのは、清塚が「どうしても演奏したかった」と語る、ラヴェルのピアノ協奏曲。指揮の円光寺雅彦からは、以前から「ショパンとラヴェルを弾きたい」と強く希望していたという裏話も紹介され、会場は笑顔に包まれた。

ラヴェルらしいジャズの要素を含むこの作品で、清塚は持ち前の高いテクニックと表現力を遺憾なく発揮。「クラシックを超えたエンターテインメント」ともいえる演奏で、時に軽妙に、時に深くドラマティックに、作品世界を彩った。

清塚信也のピアニズムは、単なる技巧や感情表現の域を超え、作品の内在する構造や精神性にまで深く踏み込んだ演奏として際立っていた。特にラヴェルのピアノ協奏曲では、複雑に交錯するリズム、ポリフォニー的処理、スウィング感を要するジャズ・エッセンスに対して、高度な譜読みと分析に裏打ちされた統制の取れたタッチで対応。

ラヴェルのピアノ協奏曲における東京フィルの演奏は、木管群のキャラクター付けが秀逸で、クラリネットとファゴットによるフレーズの受け渡しが色彩的に極めて精緻。リズムセクション(打楽器・低弦)の柔軟なノリの作り方も、ジャズ的要素を演出する上で大きな役割を果たしていた。


提供=東京フィルハーモニー交響楽団

清塚は、演奏後に「念願のラヴェルをやらせてもらいました!」と満面の笑みを見せ、拍手が鳴り止みませんでした。

リムスキー=コルサコフ/交響組曲「シェエラザード」

後半はオーケストラの華やかさが際立つ「シェエラザード」。
コンサートマスター三浦章宏によるヴァイオリンソロは、若きシェエラザードを思わせるような色香のある音色で、聴衆を幻想的な世界へと導きました。


提供=東京フィルハーモニー交響楽団

オーケストラ全体の音響バランスとドラマ構成力も際立っていた。冒頭から提示される金管の重厚な動機と、木管の幻想的な和声処理とのコントラストが明瞭で、作品の物語性に説得力をもたらしていた。


提供=東京フィルハーモニー交響楽団

第3楽章〈若い王子と王女〉では、弦楽器セクションがピアニッシモにおいても透明感と密度を両立させており、旋律線の「歌い」が非常に洗練されていた。東京フィルのアンサンブルは、円光寺の柔軟なテンポコントロールのもと、音楽の「語り」を適度に具現化。楽器の細やかな表情が織りなす音絵巻物に、聴衆が引き込まれていった。

トークの妙とあたたかい空気感


提供=東京フィルハーモニー交響楽団

このコンサートのもう一つの魅力は、何と言っても円光寺雅彦&清塚信也の軽妙なトーク。クラシック音楽の専門知識だけでなく、初心者にも親しみやすい解説やユーモアを交えて展開されるやり取りに、客席からはしばしば笑いが漏れました。

NHKの人気音楽番組『クラシックTV』でもおなじみの清塚の存在は、クラシックの“堅さ”を柔らかく包み込み、多くの聴衆に「音楽の楽しさ」を届けてくれた。

第40回を迎えた本公演は、円熟味を帯びながらも、驚きと新鮮さに満ちた内容となった。清塚信也の流れるような自由闊達なピアノ、円光寺雅彦の親しみやすいトークとテンポ感のよい指揮、そして東京フィルの緻密で壮大な演奏。自由で豊かな音楽空間が、平日の午後に花開いた。


提供=東京フィルハーモニー交響楽団

■東京フィルハーモニー交響楽団
第40回 平日の午後のコンサート
〈なんでもOKストラ!!〉

日時:2025年10月8日(水)14:00開演
会場:東京オペラシティ コンサートホール

指揮とお話:円光寺雅彦
ピアノ:清塚信也

曲目

ブラームス/ハンガリー舞曲第1番
ラヴェル/ピアノ協奏曲
〈ラヴェル生誕150年〉
リムスキー=コルサコフ/交響組曲『シェエラザード』

第40回平日の午後のコンサート | 東京フィルハーモニー交響楽団
2025年10月8日(水) 14:00 東京オペラシティコンサートホール

■東京フィルハーモニー交響楽団、10-11月のヨーロッパ・ツアー2025へ向けた クラウドファンディングの当初目標達成&ネクストゴール設定!

皆様に育てていただき114年。東京フィル、ヨーロッパ・ツアー2025最終公演日の2025年11月11日(火)23:59[日本時間]まで、クラウドファンディングを継続いたします!

東京フィルハーモニー交響楽団は、2025年10月28日~11月11日にかけ、ヨーロッパ7か国8都市を巡る演奏旅行を実施します。

たくさんのご支援と熱い激励に心より御礼申し上げます。

東京フィルでは、この目標額達成を受け「支援総額1,000万円」をネクストゴールとして設定いたしました。このネクストゴールにより、さらなるご支援の輪を広げ、オーケストラによる国際交流をより広く社会へとお伝えしてまいりたく考えております。

♪クラウドファンディングのリターンも鋭意、準備中です!

特製チケットホルダー
※一部の特典につきましては、制作・開催スケジュールの都合により、ご提供ができない場合がございます。該当の寄付者の皆様には、代替特典について個別にご連絡申し上げます。

♪シェアも応援の一つです!

サポーターの皆様にはこのプロジェクトをより多くの方にお知らせいただき、一層のご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

♪東京フィル ヨーロッパ・ツアー2025 クラウドファンディングについて詳しくは
10月28日の開幕まであとわずか!日本の響きを世界へ届ける仲間を募集しています。

詳しくはこちら↓
https://congrant.com/project/tpo/17157

東京フィルハーモニー交響楽団 チョン・ミョンフン指揮2025年10月定期(10/5, 16, 20)全公演完売にて開幕
東京フィルは10月末より同楽団名誉音楽監督でミラノ・スカラ座次期音楽監督のチョン・ミョンフンと欧州7カ国をめぐるヨーロッパ・ツアーに出発
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000106.000053202.html