フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2025が、今年も開幕。2014年~2026年まで東京交響楽団で音楽監督を務めるジョナサン・ノットの指揮で幕が開けた。

©池上直哉/ミューザ川崎シンフォニーホール
オープニング恒例の「音楽のまちのファンファーレ~フェスタサマーミューザKAWASAKIによせて」では、在京プロオーケストラを中心とした夏祭り開幕を予感させる高揚感に満ちていた。東京交響楽団ブラスの音圧と統一感が良好で、ジョナサン・ノットの明快な指揮により迫力ある演奏が披露された。

©池上直哉/ミューザ川崎シンフォニーホール
本公演開演前は、ジョナサン・ノットによるプレトークの時間が設けられた。ワーグナーとベートヴェンは、知性と心を併せもつ素晴らしい音楽だと説明。ベートーヴェン交響曲第8番はウイット(知性&ユーモア)に富んだ作品だと強調していた。

©池上直哉/ミューザ川崎シンフォニーホール
前半のワーグナー歌劇「ローエングリン」から第1幕への前奏曲では、輝かしく清澄な音色が聴衆の意識を研ぎ澄ませ、白鳥の騎士が天より降臨するかのようなオープニングにふさわしい神聖さと緊張感に満ちた。
後半は、ワーグナーの《ニーベルングの指環》全曲からのハイライトをローリン・マゼールが編曲した『言葉のない“指環”』。

©池上直哉/ミューザ川崎シンフォニーホール
15時間を超える超大作「ニーベルングの指環」(四部作)を約70分間に圧縮した音楽絵巻を呈示。ノットと東響による理想的なワーグナー楽劇が真夏のミューザ川崎シンフォニーホールで見事に具現化された。音楽的なモティーフが錯綜する複雑な構成を的確に整理しながらもドラマティックさを損なわず、濃密な叙情と英雄的昂揚が交錯する世界を作り上げた。

©池上直哉/ミューザ川崎シンフォニーホール
ノットの機知に富んだタクトにより管楽器の咆哮と弦の重厚なうねりが一体となり、あたかも舞台上に神々と英雄が甦るかのような臨場感をもたらした。曲の途中でフライング拍手があったが、聴衆の誰もが、体験した音のドラマを反芻しているような、感情の余韻に浸る時間を共有した。

©池上直哉/ミューザ川崎シンフォニーホール
終演後、客席からブラヴォーの声が上がり、鳴り止まぬ拍手は数分間にわたって続いた。

©池上直哉/ミューザ川崎シンフォニーホール
オープニングにふさわしい、壮麗かつ迫力に満ちた演奏会となり、ノットは聴衆のスタンディング
オベーションに笑顔で応えていた。

©池上直哉/ミューザ川崎シンフォニーホール
■フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2025
東京交響楽団 オープニングコンサート
日時:7月26日(土)15:00
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール
指揮:ジョナサン・ノット(東京交響楽団 音楽監督)
管弦楽:東京交響楽団
プログラム:
ワーグナー:歌劇「ローエングリン」から第1幕への前奏曲
ベートーヴェン:交響曲第8番ヘ長調Op.93
ワーグナー(マゼール編):言葉のない〝指環〟(「ニーベルングの指環」管弦楽曲集)



