【公演レポ】広上淳一&日本フィル「オペラの旅」Vol.1 ヴェルディ歌劇「仮面舞踏会」

4月26日(土)広上淳一&日本フィルハーモニー交響楽団 第一弾「オペラの旅」
ジュゼッペ・ヴェルディ歌劇「仮面舞踏会」(セミ・ステージ形式)をサントリーホールで聴いた。コンサートマスターは、田野倉雅秋。


Ⓒ山口敦

「仮面舞踏会」は、ジュゼッペ・ヴェルディが作曲し、1859年2月17日に初演された全3幕からなるオペラで「シモン・ボッカネグラ」の次作として作曲された作品。時期的には、中期の傑作三部作として名高い「リゴレット」「イル・トロヴァトーレ」「椿姫」の数年後に作曲された作品となっている。

「オペラの旅」は、指揮者の広上淳一と日本フィルの42年の付き合いの中から誕生した企画。広上は約36年間の指揮者生活の中で、日本フィルから毎年出演の機会をいただいた。楽団に何か恩返しができないか熟考した末、同企画を発案。広上は、1989年、シドニー・オペラハウスで「仮面舞踏会」をはじめて指揮し、若き日の思い入れが詰まった演目である。

ボストン総督リッカルド役の宮里直樹は、明るくのびやかなテノールで聴衆を魅了。高音の発声と技巧の面で目を見張るものがあり、ロマンツァ「恍惚とした喜びの中で」では、テノールの美しさを会場いっぱいに響かせた。


Ⓒ山口敦

リッカルドの妻アメーリア役の中村恵理は、苦悩と愛のはざまで揺れる女性を豊かな声と深みがある演技力で観客の心を打った。2幕のアメーリアとリッカルドの二重唱「ああ、何と心地よいときめきが」は、愛の極致ともいうべき情熱的な二重唱。切々とした愛情表現と立体的かつ生命力に溢れた重唱が見事だった。


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リッカルドの秘書レナートの池内響は、内面を深く彫り込んだバリトンを聴かせ、舞台に緊張感を与えた。


Ⓒ山口敦

予言者・占い師であり、主人公リッカルドの運命を左右する役柄を担うウルリカの福原寿美枝は際立つ存在感と演技力が上出来。呪文の歌「地獄の王よ、急ぎ賜え」では独特の神秘性を発露し、聴き手に注目された。


Ⓒ山口敦

小姓オスカルの盛田麻央は、軽やかで清涼感ある歌声と機敏な演技で、舞台を照らした。


Ⓒ山口敦

東京音楽大学の合唱は、新鮮味溢れるもので、同オペラを後ろから支えた。広上淳一の指揮は、ドラマティックでありながら作品全体に一貫とした存在感を与えるもので、主役3名の優れた歌唱とがっちりと噛みあい、聴衆にオペラを聴く喜びを与えた。


Ⓒ山口敦

演出家の高島勲は、オーケストラの後ろの舞台空間と動線とダンサーを巧みに活用した演出でオペラのドラマ性を高め、物語の本質を浮き彫りにした。


Ⓒ山口敦

セミ・ステージ形式ながらも演劇的要素を活かした演出で、音楽とドラマの濃密な融合を体現した公演だった。


Ⓒ山口敦

■広上淳一&日本フィル「オペラの旅」Vol.1
ヴェルディ:オペラ「仮面舞踏会」
セミ・ステージ形式/全3幕/字幕つき

日時:4月26日(土)17:00
会場・サントリーホール 大ホール

ヴェルディ:オペラ「仮面舞踏会」
セミ・ステージ形式/全3幕/字幕つき
台本:アントーニオ・ソンマ
作曲:ジュゼッペ・ヴェルディ

STAFF:

指揮:広上淳一  [フレンド・オブ・JPO(芸術顧問)]
演出:高島勲
振付:広崎うらん
衣裳:桜井久美(アトリエヒノデ)
照明:岩品武顕
舞台監督:幸泉浩司
副指揮:喜古恵理香、荒木流音生
演出助手:根岸幸

CAST

アメーリア:中村恵理
リッカルド:宮里直樹
レナート:池内響
ウルリカ:福原寿美枝
オスカル:盛田麻央
シルヴァーノ:高橋宏典
サムエル:田中大揮
トム:杉尾真吾
合唱:東京音楽大学
合唱指揮:浅井隆仁

管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団

オペラの旅Vol.1 ヴェルディ《仮面舞踏会》 特設ページ
1956年創立。日本フィルハーモニー交響楽団の公式サイト。 現在、《オーケストラ・コンサート》、《エデュケーション・プログラム》、《リージョナル・アクティビティ》の3本柱で活動しています。