【公演レポ】新国立劇場、珠玉のダブルビル 「フィレンツェの悲劇」「ジャンニ・スキッキ」を上演!

4月10日、新国立劇場でダブルビル(2本立て)公演「フィレンツェの悲劇」(1917年初演)/「ジャンニ・スキッキ」(1918年初演)を新国立劇場オペラパレスで観賞した。新国立劇場 大野和士芸術監督が打ち出した「ダブル・ビル」シリーズの再演。


撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場

ツェムリンスキーの「フィレンツェの悲劇」とプッチーニの「ジャンニ・スキッキ」は舞台が共にイタリアの古都フィレンツェだが、前者が「悲劇」で、後者は「喜劇」。同じフィレンツェの地で、正反対の意味を持つ物語が配置され、大野芸術監督の拘りと妙技を感じさせる組み合わせである。


撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場

前半に「フィレンツェの悲劇」、後半「ジャンニ・スキッキ」が上演された。「フィレンツェの悲劇」シモーネ役のトーマス・ヨハネス・マイヤー(バリトン)は負の念が宿った圧巻の歌唱と演技で舞台を牽引。


撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場

びわ湖ホール等でオペラの指揮を深化させてきた沼尻竜典は、ミステリアスな雰囲気と物語の暗部を以前に増して、的確に表出していた。


撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場

「ジャンニ・スキッキ」はプッチーニ唯一の喜劇作品で、富豪の遺産分配をめぐるドタバタ歌劇。「ジャンニ・スキッキ」も歌手陣が充実していた。イタリアの実力派バリトン ピエトロ・スパニョーリは多彩な声と円熟味ある演技で観客を魅了。


撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場

愛娘ラウレッタ役の砂田愛梨(ソプラノ)は、最大の聴かせところである名アリア「私のお父さん」(O mio babbino caro)で目が覚めるような歌を披露。美しく高音域までよく伸びるソプラノをストレスなく響かせた。「もしリヌッチョと結婚できないのなら、ポンテ・ベッキオ(古い橋)からアルノ川に身投げするわ」と歌い、聴き手の涙を誘った。砂田は、ミラノ在住でイタリア等で活躍中の本格派ソプラノ。非の打ちどころがない日本人離れした歌唱力で、独唱後、盛大なブラヴォーを浴びていた。


撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場

イギリスのソプラノ歌手、デイム・ジョーン・ハモンドは、「私のお父さん」英語版の曲のレコードを百万枚以上売り上げ、1969年にゴールドディスクを獲得。「私のお父さん」は、「ジャンニ・スキッキ」の枠内に留まらない広く知られた名曲となっている。


撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場

ラウレッタの恋人役リヌッチョを演じた村上公太(テノール)は、アリア「フィレンツェは花咲く木のように」(Firenze è come un albero fiorito)で勢いがあるテノールを聴かせ、拍手喝采を浴びていた。ラウレッタとリヌッチョがラストに歌唱する二重唱「ぼくのラウレッタ」(Lauretta mia)は、歌を聴いているだけでこみ上げてくるような至福感に満たされているものだった。プッチーニの作曲家、メロディメーカーとしての天才ぶりに舌を巻いた。


撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場

「ジャンニ・スキッキ」の舞台装置はこれまた観客の目を楽しませる大変優れたものだった。斜めに拡大された書斎が舞台となっており、巨大な天秤や時計や手紙などが配置されている。遺産を巡り、欲に取りつかれた小人たちが机の上で大騒ぎしているような様相をコミカルに表現している。粟國 淳演出の舞台は、オペラファンだけではく、ミュージカルファンや子供達にも見てもらいたい舞台となっていた。


撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場

演奏は東京交響楽団。「ジャンニ・スキッキ」では、のびのびと歌い上げるような柔らかな演奏で、プッチーニ唯一の喜劇歌劇の魅力を伝えていた。

■新国立劇場 2024/2025 シーズン オペラ

アレクサンダー・ツェムリンスキー
フィレンツェの悲劇
Eine florentinische Tragödie / Alexander Zemlinsky
全1幕〈ドイツ語上演/日本語及び英語字幕付〉

ジャコモ・プッチーニ
ジャンニ・スキッキ
Gianni Schicchi / Giacomo Puccini
全1幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉

公演期間:
2025年2月2日[日]~2月8日[土]
予定上演時間:
約2時間35分(休憩含む)

STAFF:

【指揮】沼尻竜典
【演出】粟國 淳
【美術】横田あつみ
【衣裳】増田恵美
【照明】大島祐夫
【舞台監督】CIBITA斉藤美穂

CAST:

『フィレンツェの悲劇』

【グイード・バルディ】デヴィッド・ポメロイ
【シモーネ】トーマス・ヨハネス・マイヤー
【ビアンカ】ナンシー・ヴァイスバッハ

『ジャンニ・スキッキ』

【ジャンニ・スキッキ】ピエトロ・スパニョーリ
【ラウレッタ】砂田愛梨
【ツィータ】与田朝子
【リヌッチョ】村上公太
【ゲラルド】青地英幸
【ネッラ】針生美智子
【ゲラルディーノ】網永悠里
【ベット・ディ・シーニャ】志村文彦
【シモーネ】河野鉄平
【マルコ】吉川健一
【チェスカ】中島郁子
【スピネッロッチョ先生】畠山 茂
【アマンティオ・ディ・ニコーラオ】清水宏樹
【ピネッリーノ】大久保惇史
【グッチョ】水野 優

【管弦楽】東京交響楽団

フィレンツェの悲劇/ジャンニ・スキッキ
新国立劇場のオペラ公演「フィレンツェの悲劇/ジャンニ・スキッキ」のご紹介。 新国立劇場では名作から世界初演の新作まで、世界水準の多彩なオペラを上演しています。