【ゲネプロ】日生劇場 ガエターノ・ドニゼッティ作曲 ラブコメ・オペラ「連隊の娘」

東京日比谷の日生劇場にてドニゼッティ作曲 歌劇「連隊の娘」の公演が開催。
連日満員の同公演に先駆けて開催されたゲネプロを2日間鑑賞した。


撮影:三枝近志 提供:公益財団法人ニッセイ文化振興財団[日生劇場]

ベルカント・オペラの英才ガエターノ・ドニゼッティ作曲のラブコメ・オペラ「連帯の娘」。
ドニゼッティは、イタリアのベルガモに生れて同地で没したオペラの作曲家。ジョアキーノ・ロッシーニやヴィンチェンツォ・ベッリーニと共に19世紀前半のイタリアを代表するオペラ作曲家として大成功を収めた。「連隊の娘」は、全2幕からなるフランス語によるオペラ・コミック。

舞台は、ナポレオン戦争当時のアルプス・チロル地方の山村で、ヒロインのマリーは、幼い頃に両親(貴族)と生き別れ、フランス軍21連隊に育てられたアイドル的な娘で彼女の成長過程を描いた作品。


撮影:三枝近志 提供:公益財団法人ニッセイ文化振興財団[日生劇場]

日本ではめったに上演されない名作だが、初演は大成功で、オペラ・コミック座での公演は1914年までに1,000回を超えた話題作だった。同作は、ベルカント・オペラの真骨頂である「ハイC」と呼ばれる超高音や超絶技巧で彩られた名曲の数々が聴ける。

● 砂田愛梨・澤原行正組(1日目)

トニー役は怪我をした糸賀修の代理を務めた澤原行正が歌唱。第一幕の有名なハイCを難なくこなし、第2幕アリアでは、温かく甘い感じをする歌唱が印象的だった。


撮影:三枝近志 提供:公益財団法人ニッセイ文化振興財団[日生劇場]

マリーを歌唱する砂田愛梨が圧倒的な歌唱を披露した。煌めくような生き生きとした歌声とキレよい発声。リリックな表現から細かい装飾技巧・アジリタまでいずれも素晴らしい出来だった。


撮影:三枝近志 提供:公益財団法人ニッセイ文化振興財団[日生劇場]

砂田のマリー役は大当たりで、いるだけで舞台がパッと明るくなる存在感と快活な演技力に惹きつけられた。イタリア・ミラノ在住の砂田は、日本における名舞台の主役デビューを理想的な形で飾った。


撮影:三枝近志 提供:公益財団法人ニッセイ文化振興財団[日生劇場]

●熊木夕茉・小堀勇介組(2日目)

トニー役の小堀勇介は、光り輝く美声を披露。後半のアリアは、しっとりと切々と歌う姿に心打たれた。


撮影:三枝近志 提供:公益財団法人ニッセイ文化振興財団[日生劇場]

マリー役は、本公演がオペラデビューという熊木夕茉が歌唱。初のオペラデビューとは思えず、いきなりのタイトルロールを見事にこなした。


撮影:三枝近志 提供:公益財団法人ニッセイ文化振興財団[日生劇場]

孤児のマリーは、赤ん坊の時に軍隊に拾われ、可愛がられて育った天真爛漫な女の子だが
別れを惜しみつつ、さようなら!「私は行かなければならない」(Il faut partir !)と歌ったソプラノの聴かせどころでは、マリーの苦悩をよく表現していた。

●理想的な粟國淳演出と武田久美子の創造性溢れる衣装

ポップでキュートな「おもちゃの世界」をコンセプトに舞台が演出された。背景のチロルの山はジグソーパズル。舞台には大きく可愛い木目調のクマの人形、積み木の家などが置かれ、大人から子供までが楽しめる公演だった。


撮影:三枝近志 提供:公益財団法人ニッセイ文化振興財団[日生劇場]

衣裳は武田久美子によるもので、貴族のドレスは平面なパネルに作られた独創性溢れるものが提示されたことに驚かされた。


撮影:三枝近志 提供:公益財団法人ニッセイ文化振興財団[日生劇場]

21連隊はフランス軍ということで赤・白・青の3色を組み合わせたトリコロール・カラーをアレンジしたカラーリングを採用。21連隊の兵士たちは、海外のプロダクションでは、単一ユニフォームの軍服姿がお決まりだが、当プロダクションでは、一人一人異なった衣裳が創作された。


撮影:三枝近志 提供:公益財団法人ニッセイ文化振興財団[日生劇場]

大ヒットアクション映画「マッドマックス」や「G.I.ジョー」をヒントに衣裳がクリエイトされたようだが、週刊少年ジャンプ(最大発行部数635万部)の超人気アニメ「北斗の拳」や「ドラゴンボール」の世界観とも重なった。映画ファン・アニメファンにとっても垂涎な日本ならではの好公演で、ベルカント・オペラやラブコメ・オペラの可能性を大いに広げた心弾む名演だった。


撮影:三枝近志 提供:公益財団法人ニッセイ文化振興財団[日生劇場]

合唱は、三澤洋史 指揮のC.ヴィレッジシンガーズ。実力あるメンバーが、楽しそうに生き生きと歌唱している姿が印象的。原田慶太楼 指揮の読売日本交響楽団の演奏も素晴らしく、カラフルで躍動的な舞台に華を添えた。日生劇場 歌劇「連隊の娘」は大変優れたプロダクションで大成功を収めた。再演を求める声がおちらこちらから聞えてくる。


撮影:三枝近志 提供:公益財団法人ニッセイ文化振興財団[日生劇場]

■NISSAY OPERA 2024
『連隊の娘』

全2幕(原語[フランス語]上演・日本語字幕付)新制作
作曲:ガエターノ・ドニゼッティ
台本:ジュール=アンリ・ヴェルノワ・ド・サン=ジョルジュ、ジャン=フランソワ=アルフレッド・バイヤール

【上演日程】

2024年 11 月9 日(土)・10 日(日)各日14:00開演

【キャスト】

11月9日(土)/11月10日(日)

マリー:砂田 愛梨/熊木 夕茉
トニオ:澤原 行正※ /小堀 勇介
ベルケンフィールド侯爵夫人:金澤 桃子/鳥木 弥生
シュルピス:山田 大智/町 英和
オルテンシウス:加藤 宏隆/森 翔梧
伍長:市川宥一郎(両日)
農民:工藤翔陽(両日)
クラッケントルプ公爵夫人:金子あい(両日)

公証人:阿瀬見貴光(両日)
従者:大木太郎(両日)

【スタッフ】

美術:イタロ・グラッシ
照明:稲葉直人(A.S.G)
衣裳:武田久美子
ヘアメイク:橘 房図
振付:伊藤範子
音響:山中洋一(サウンドわいわい)
字幕:本谷麻子
対訳・台本作成協力:石川裕美

演出助手:生田みゆき、橋本英志
振付助手:宮城 文
舞台監督:山田ゆか(ザ・スタッフ)
合唱指揮:三澤洋史
副指揮:根本卓也、湯川紘惠、平石章人
コレペティトゥア:平塚洋子、三澤志保
原語指導:大庭 パスカル、根本卓也
宣伝美術:秋澤一彰
宣伝イラスト:サイトウユウスケ

指揮:原田 慶太楼
演出:粟國 淳(日生劇場芸術参与)
管弦楽:読売日本交響楽団
合唱:C.ヴィレッジシンガーズ

日生劇場舞台フォーラム 2024『連隊の娘』演出・美術・衣裳・照明
https://www.youtube.com/watch?v=0USwscUFWPM

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