9月19日東京フィルハーモニー交響楽団第164回東京オペラシティ定期シリーズ
ヴェルディ歌劇『マクベス』オペラ演奏会形式を東京オペラシティコンサートホールで聴いた。
名誉音楽監督チョン・ミョンフンによるヴェルディ歌劇のオペラ演奏会形式。2022年からの『ファルスタッフ』『オテロ』の名演に続き、ヴェルディがオペラ化したシェイクスピア作品を取り上げられ、2024年9月はヴェルディの歌劇『マクベス』が披露された。
撮影=上野隆文/提供=東京フィル
『マクベス』(Macbeth)は、イタリアオペラの巨匠ジュゼッペ・ヴェルディが作曲した全4幕からなるオペラ。ウィリアム・シェイクスピアの同名戯曲『マクベス』に基づいて作曲されており、1847年にイタリア・フィレンツェで初演された。『マクベス』はヴェルディ初期の傑作オペラでウィリアム・シェイクスピアの4大悲劇を一つを題材とし、権力に溺れ身を滅ぼす愚かな生身の人間の姿を鋭敏に描いている。
タイトルロールのマクベスはセバスティアン・カターナ(バリトン)。マクベスはスコットランド王ダンカンに仕える将軍で、王を弑虐し権力を手中に収めるが苦悩する姿を描写した。
撮影=上野隆文/提供=東京フィル
マクベス夫人は韓国人歌手のヴィットリア・イェオ(ソプラノ)が歌唱。マクベス夫人は、鬼気迫った姿で王位を獲得するよう夫に迫る毒気ある難役だが演技と表情に優れ、芯が通った鋭敏な歌唱に惹きつけられた。
撮影=上野隆文/提供=東京フィル
チョンミョンフンは指揮でオーケストラの音色を色彩感に富んだものへと昇華させ、ヴェルディ歌劇『マクベス』の持つ悲劇性と特殊性、歌手の心情表現までもタクトで明確に描く技量はさすがだった。
撮影=上野隆文/提供=東京フィル
東京フィルの音は極めて豊麗かつ柔軟性に富み、緩急があるものだった。金管セクションの音色はフレクシブルで弾力があり、木管セクションの個人芸も職人芸の域に達した隙がないものだった。複雑な人間の本性が絡み合う心の闇と美麗なメロディの対比は時折、ゾクッとするような興奮と感動を醸し出す効果があった。
撮影=上野隆文/提供=東京フィル
オーケストラの音楽的な基盤を形成する弦セクションは、歌心に富み、ヴェルディの音楽に輝きをもたらした。打楽器セクションは、ダイナミクスや音色表現でマクベスの真髄に迫っていた。
撮影=上野隆文/提供=東京フィル
霊妙精緻な新国立劇場合唱団の合唱も美しいハーモニーの面で卓抜した存在感に溢れ、18人の女性は「魔女の合唱」で大活躍した。
撮影=上野隆文/提供=東京フィル
劇場的要素に焦点をあてたチョン・ミョンフンのスピーディかつスリリングな指揮と深く拘りがある音楽的解釈は、オーケストラ・合唱団・ソロ歌手を存在感際立つ演者へと高めていた。
撮影=上野隆文/提供=東京フィル
シェイクスピアとヴェルディによる3作の完結となる『マクベス』だったが、聴衆とオーケストラにとって得難い財産・経験となった。
撮影=上野隆文/提供=東京フィル
■東京フィルハーモニー交響楽団
第164回東京オペラシティ定期シリーズ
ヴェルディ/歌劇『マクベス』オペラ演奏会形式
全4幕・日本語字幕付き原語(イタリア語)上演
公演時間:約2時間45分(休憩含む)
日程:2024年9月19日(木)19:00
会場:東京オペラシティコンサートホール
指揮:チョン・ミョンフン(名誉音楽監督)
マクベス(バリトン):セバスティアン・カターナ
マクベス夫人(ソプラノ):ヴィットリア・イェオ
バンクォー(バス):アルベルト・ペーゼンドルファー(※)
マクダフ(テノール):ステファノ・セッコ
マルコム(テノール):小原啓楼
侍女(メゾ・ソプラノ):但馬由香
医者(バス):伊藤貴之
マクベスの従者、刺客、伝令(バリトン):市川宥一郎
第一の幻影(バリトン):山本竜介
第二の幻影(ソプラノ):北原瑠美
第三の幻影(ソプラノ):吉田桃子
合唱:新国立劇場合唱団(合唱指揮:冨平恭平)