【公演レポ】モーリス・ベジャール・バレエ団2024年日本公演『バレエ・フォー・ライフ』


9月22日(日)、モーリス・ベジャール・バレエ団2024年日本公演Aプログラム「バレエ・フォー・ライフ」を鑑賞した。モーリス・ベジャール・バレエ団にとって3年ぶり19度目の日本公演となった。


ⒸKiyonori Hasegawa

世界的ロックバンド「クイーン」の伝説的カリスマシンガー、フレディ・マーキュリーとカリスマ ダンサー、ジョルジュ・ドンが相次いで亡くなり、彼らへのオマージュとして捧げられたバレエ。奇しくもフレディやドンと同世代で衣裳デザインを担当したジャンニ・ヴェルサーチは本作の初演を待たずに1997年7月フロリダで凶弾に倒れている。


ⒸKiyonori Hasegawa

「バレエ・フォー・ライフ」の初演は1997年。天才振付家モーリス・ベジャールの晩年期に作られた作品で生と死を見つめる現代人の芸術として独特の輝きを放っている。モーリス・ベジャールは1960年にはベルギーの支援を得て20世紀バレエ団を結成し、1986年に「ザ・カブキ」を1993 年に「M」を創作している。ベジャールは、舞台芸術としてのバレエを、思想表現の域まで高めたと賞賛され、舞踊のみならず、他の芸術分野まで多くの影響を及ぼしてきた。


ⒸKiyonori Hasegawa

本作は、クイーンのロック・ミュージックの間にモーツァルトのクラシック音楽が相互に挿入されるシンメトリー構造となっていた。革命的で斬新な舞台展開と音楽の巧みな使い分けに驚かされた。幕開けの「イッツ・ア・ビューテフル・デイ」のシーンは壮観&スペクタクルで白い布を自在に使っての舞台効果が白眉で一気に舞台に引き込まれた。

同曲はフレディの声と効果音が随所に散りばめられた曲となっており、ダンサーたちの心技体を生かしたパフォーマンスが披露された。ダンサー達が舞台を所狭しと駆け巡り劇場全体がエネルギーに溢れたコンサート会場に変貌したかのような錯角に陥った。

2019年にYouTubeでのミュージックビデオの再生回数が10億回を突破した不朽の名曲「ボヘミアン・ラプソディ」では、カンパニー全員が出てきて、スペクタクルで感動的な舞台が展開。ビデオが映し出された「ブレイク・フリー」では存りし日のジョルジュ・ドンの姿が長く投影される。ベジャールにとっての唯一無二のダンサーであったジョルジュ・ドンの大きさと存在感を感じさせた。ベジャールにとって愛すべきカリスマであったドンは、ベジャールの母親の婚約指輪を託されていたほど信頼されており、左手に常にその指輪を外さなかったと言われる。

カーテンコール「ショー・マスト・ゴー・オン」の音楽の中、ベジャールの大きな写真が舞台中央にセットされ、ダンサーひとりひとりが、ベジャールの写真の前で敬意をもってお辞儀するシーンに感涙。バレエ団創立者で振付家で思想家、芸術と仲間をこよなく愛した英才モーリス・ベジャールの偉大さと想いに触れた公演だった。

終演後、バレエ団は総立ちのスタンディングオベーションで迎え、喝采が贈られた。


ⒸKiyonori Hasegawa

■モーリス・ベジャール・バレエ団2024年日本公演
「バレエ・フォー・ライフ」

日時:9月22日(日)18:00
会場:東京文化会館

振付:モーリス・ベジャール
音楽:クイーン、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
衣裳:ジャンニ・ヴェルサーチ

イッツ・ア・ビューティフル・デイ:
カンパニー全員

フレディ:
アントワーヌ・ル・モアル

タイム/レット・ミー・リヴ :
カンパニー全員

ブライトン・ロック:
ソレーヌ・ビュレル、ゴハール・ムコルトチヤン、シプリアン・ブヴィエ、大橋真理、オスカー・シャコン、ジャスミン・カマロタ、ヴィト・パンシーニ

ヘヴン・フォー・エヴリワン:
アンジェロ・ペルフィド、リアム・モリス、ダニエル・アグアド・ラムサイ、シプリアン・ブヴィエ
天使:オスカー・フレイム

ボーン・トゥ・ラヴ・ユー:エリザベット・ロス
花嫁:フロリアーヌ・ビジョン
天使:アンドレア・ルツィ

モーツァルト「コジ・ファン・トゥッテ」:
大橋真理、オスカー・シャコン、ジャスミン・カマロタ、ヴィト・パンシーニ

カインド・オブ・マジック:
ドノヴァーヌ・ヴィクトワール、アンジェロ・ペルフィド、ゴハール・ムコルトチヤン、アレッサンドロ・カヴァッロ、シプリアン・ブヴィエ、ドリアン・ブラウン、エドアルド・ボリアーニ、大貫真幹、岸本秀雄、イエロニマス・クリヴィツカス、クウィンテン・ギリアムズ、武岡昂之介、リアム・モリス

モーツァルト「エジプト王タモス」への前奏曲:
オスカー・シャコン

ゲット・ダウン・メイク・ラヴ:
大橋真理、オスカー・シャコン、キャサリーン・ティエルヘルム、ドリアン・ブラウン、アントワーヌ・ル・モアル

モーツァルト ピアノ協奏曲第21番:
キャサリーン・ティエルヘルム、ドリアン・ブラウン、アンジェロ・ペルフィド、キアラ・ポスカ

シーサイド・ランデヴー:
イ・ミンギョン、ダニエル・アグアド・ラムサイ、リアム・モリス、カロリナ・フレニャン、ビアンカ・ストイケチウ、クララ・ボワテ

テイク・マイ・ブレス・アウェイ:
大橋真理、ジョルト・コヴァッチ、ドノヴァーヌ・ヴィクトワール、ヴァレリア・フランク、イ・ミンギョン

モーツァルト「フリーメーソンのための葬送音楽」:
オスカー・シャコン

Radio Ga Ga:
アレッサンドロ・カヴァッロ、全男性ダンサー

ウインターズ・テイル:
ヴィト・パンシーニ、アンジェロ・ペルフィド、キアラ・ポスカ

ミリオネア・ワルツ:
武岡昂之介、シプリアン・ブヴィエ、ドノヴァーヌ・ヴィクトワール、岸本秀雄、ジョルト・コヴァッチ

ラヴ・オブ・マイ・ライフ:
大橋真理、オスカー・シャコン、ジャスミン・カマロタ、ヴィト・パンシーニ

ブライトン・ロック:
シプリアン・ブヴィエ、岸本秀雄、ユール・ドイチュマン、カロリナ・フレニャン

ボヘミアン・ラプソディ:
カンパニー全員

ブレイク・フリー (ビデオ):
ジョルジュ・ドン(ビデオ)とカンパニー

ショー・マスト・ゴー・オン:
カンパニー全員

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